2009年 05月 15日
ベルリンフィル 最高のハーモニーを求めて |
北京・ソウル・上海・香港・台北・東京と、ツアーに同行し、オーケストラの楽団員達や指揮者のサイモン・ラトルにインタビューをしながら映画が進んでいく。
オーケストラのコンサートに出かける機会はあったとしても、オーケストラの楽団員の人の話を聞く機会なんて、ほぼ無いに等しい。裏側を垣間見るというか、中身を知ると非常に興味深い。
何が興味深いかというと、それぞれの楽団員の人々の「音楽」という芸術をクリエイトする者の苦悩と葛藤、音楽に対する情熱を惜しげなく魅せてくれているから。
それぞれの過去と現在・・・。
多くの人となじめず、引っ込み思案だったり、話しベタだったりした過去を持っていた楽団の人たち。
しかし、楽器という媒介を通し、コミュニケーションが可能になった時に発揮できる能力によって、自信が持て、成長してきたという過去があったそうだ。
過去に一人変わったヤツとして扱われてきた個性的な人間が、いかにして集団の和を保つようにと修行させられているかを見ているようで、私個人的にも思う部分があった。
現在は、楽団の一員という重圧に押しつぶされ、精神的に追い込まれながらも、いい演奏を求めて「音楽」という旅を続けていく彼ら。きっと、毎日、不安や苦悩でいっぱいだろう、しかし、いい演奏が出来た時の喜びは、ひとしおであり、その割合が例え1%だったとしても、それで99%のしんどかった事実がチャラになるほど、彼らの思う音楽というのは、至上な何かなんだと思う。
素晴らしい音を作りあげていくというゴールへたどり着くまでには、実にさまざまなことがあるけれど、喝采を浴びたり、全てが一つになったようなときに味わう至福感のことを指揮者の人は、「これはドラッグのようなもんで、そんなジャンキーでいれて幸せもんだよ。」みたいなことを言ってた。
いい演奏が出来た時には、宇宙との一体感を感じ、今ここで死ねたら・・・と思うほど、素晴らしいのだそうだ。
個と集団、公と私の間で揺れ、自信と落胆を繰り返し、伝統を守るか改革の進化を図るかで戸惑い、仕事としてなのか、使命なのかで考え込み、それらの間を行ったり来たりしながら、バランスを取っていく彼ら。
自分の心の中に調和が生まれた時、本当の意味で最高のハーモニーが訪れるのだろう。
それぞれの人の、様々な言葉の中にフィロソフィーがあり、それらの生きた言葉は、生きる知恵として、観るものに何がしかを伝えていく・・・。いわば、言霊のようなもんやね。
楽団の一人が言った「自分たちはただ音を再生しているのではない。」という言葉があったが、
ただ楽譜どおりに機械的に弾いているのではなく、それぞれの生身の人間が織り成す内面からあらわれる魂の通った演奏であるということだろう。
東京のシーンで映し出される明治神宮の映像から「静寂さ」があらわされていて、すごくきれいだったのも印象的だった。(インド哲学では、静寂の中の無音は、心で聞く音、<アナハタ・ナーダ>と説く)
こうして、作る人の側面を見ると、オーケストラを観に行った時により深く「音」を楽しめると思う。これぞ、まさに「音楽」やね・・・。
すべては、ハーモニー(調和)だ。
公式サイト
http://www.cetera.co.jp/BPO/
by mandalasoap
| 2009-05-15 00:03
| 映画マンダラ